2012年7月25日水曜日

コータ君5回目

コータ君の5回目です。ひとまずは回数制5回の満了、ありがとうございました。

まず、ピッチングですが、左右を反転して左投手にしてみると、メジャー最速投手のアロルディス•チャップマンに似ている事に驚かされます。



チャップマン動画
http://www.youtube.com/watch?v=Z-otX7eZuPY&feature=plcp

投球腕に関しても、この連続写真のような肘から挙る形は中々出来るものでは有りません。この形などまさにチャップマンですね。













下の動画は、ベストショット的に良い所を集めたものです。


先にスローイングの方から書きます。
まず、まだ理論変更が有ってから間もないので、あれ以降もやや変更点が有ります。

まず、基本的なポイントとしては、前脚を大きく挙げると言うピッチングの特徴(マウンドのプレートに足を置いた状態から投げるので助走出来ない代わりに前脚を大きく挙げる)を考えると、セット始動がマッチしないと言う事でした。

例えば、Drew Storen は前脚を大きく挙げないので、動画のようにかなりセット始動に近い投げ方が出来るわけです。
http://www.youtube.com/watch?v=Od8AJMZFhIw&feature=plcp

一方、Tyler Thornburg はMax 98マイルの速球で注目されている新人ですが、この投手の場合、典型的なメジャー式の脚の挙げ方で、そのぶん、脚を降ろすと同時に腕を下にぶら下げてから始動しています。
http://www.youtube.com/watch?v=G9iyGX9BiOE&feature=plcp

Jered Weaver も比較的投球腕を下にぶら下げてから始動するタイプです。
http://www.youtube.com/watch?v=eDRSUN1XZbc&feature=plcp

ただ、David Robertson とか、Charlie Furbush などは、あまり投球腕をぶら下げる感じは有りません。Aroldis Chapman もです。

そして、Rovertson や Furbush の方が、テークバックで肘から挙げる感じが良く出ています。結論から言うと、どちらでも投げられます。人によってはぶら下げた方が投げやすい場合も有るかもしれません。ただ、投球腕が肘から上がり、そのあと外旋して、しなる感じは、ぶら下げないRovertson や Furbush の方が出ています。特にWeaver は少しアーム気味です。

ですから、基本的にぶら下げない方が良い(肘を痛めない腕の振りになる)のですが、どうしたらそうなるかと言う事が問題です。



そこで、下図(図1)ですが、下図は当日お話しましたように、前脚を挙げてから降ろす時、後ろ足の上に軸を保つ意識を強く持った動作です。少し後ろに上半身を傾けるようにしています。

図1

一方、下図(図2)は、特に後ろ脚軸を意識しないで、あまり上半身を傾けずに、自然にする動作です。
図2



これらの違いですが、図2の方は、身体が自然に前に出て行くので、その前に出て行く身体に対してボールが後ろに残ろうとして、自然にグラブとボールが(重心移動と連動して)割れます。

一方、図1の方は後ろ足の上に軸を作るので、身体が前に出て行きにくく、そのぶん、グラブとボールも割れにくくなります。ここで割ろうとすると、意図的に割らざるを得ず、その場合は下にぶら下げる使い方になりがちです。

つまり、図2の方はある意味で体幹部はアンバランスな状態になるため、バランスを取ろうとしれグラブとボールが割れて来るわけですが、図1の方は後ろ脚に乗る事それ自体でバランスが取れてしまうため、上半身でバランスを取る必要が無く、グラブとボールが割れにくいのです。

ラボ当日は、前脚を挙げて、下げて、投げると言いましたし、前脚を降ろす時、後ろ足の上に軸を作ると言いましたが、その辺がどうも間違いと言うか、変えた方が良いと言うのが、この話の大きな主旨です。

つまり、まず第一の変更点として、前脚を降ろす時、無理に後ろ脚軸を作らず(後ろに身体を傾けず)真っすぐ軸を保つと言う事です。

次に第二の変更点として、前脚を挙げて、下げて、投げるのでは無く「挙げて、フッと力を抜いて、ガッと投げる」と言う事です。

第一の変更点については、それによって、グラブとボールが重心移動との連動で自然に割れるようになると、(Furbush のように)肘から挙る形が作りやすくなると言う効果が有ります。後ろ軸を作ってしまうと、グラブとボールが割れにくくなります。

第二の変更点については、まず軸脚で(踵体重で)グッと踏みながら前脚をブラーンと挙げて、その後で、フッと全身をリラックスさせてやると前脚が自然に落下すると同時にグラブとボールが割れるので、その動きの中で始動する(ガッと投げに行く)と言う事です。言葉がけで言うと「グッと踏みながらブラーンと前脚を挙げて、フッと力を抜いて、ガッと投げる」で良いです。もう少しシンプルにすると「グッと挙げてフッと抜いて、ガッと投げる」とか「ブラーンと挙げて、フッと抜いて、ガッと投げる」でも良いです。いずれにしても、そういう単純な言葉でリズムで憶える事が重要です。

この方法を実践(7月28日)したのが下の動画です。この動画は投げるリズムだけに注目して見てください。


前脚を挙げた後、フッと力を抜き、そのリラックスした状態の中から、一気にガッと投げに行く感覚で投げています。

コータ君の場合でも、当日、投げに行くリズムで少し苦心していた感が有りましたが、こちらの言葉がけの問題も有ったのだと思います。
ただ、これらはどちらが○でどちらが×と言うよりは、一長一短あると言う方が正確かもしれません。つまり「後ろ軸を作る方は、後ろ脚の力が使いやすいが腕の力はアーム式になりやすい」のであって、一方「中心軸をキープする方は、投球腕のスイングは良くなるが、後ろ脚の力は(後ろ軸を作る場合に比べると)やや使いにくい」と言うメリットデメリットが考えられます。

ただ、方針としては「中心軸の方をベースとしながら、出来るだけ後ろ脚の力も使えるように、身体が前に流れないように気を付ける」と言うのがベストだと思います。

続きます。

要はテークバックのところで、写真のような形を作れないと、肩や肘に負担がかかる投げ方になると言う事です。

この形が良い投手の例として、クレイグ•キンブレルを見てみましょう。現在のメジャー最高クローザーの一人です。


脚の挙げ型はブラーンとスイングするタイプでは無く、最初から膝を曲げたコンパクトなものですが、骨盤ごと回転させて挙げるのが日本人との違いです。100マイル近い豪速球と80マイルを超えるスライダーのようなカーブ、浮き上がる豪速球、レーザービームのように低めに決まる豪速球が武器の投手です。

そこで次の動画ですが、この動画の最初に斜め横から見たシーンが有りますが、それを見ると、上半身がほとんど真っすぐで、後ろ脚の方に傾けていない事が解ります。こういうタイプの方が、投球腕を内旋して肘から挙るテークバックが出来やすいのです。

その他にも以下の投手は参考になります。

アロルディス•チャップマン
前に出て行く際に頭が残るので、やや傾きますが、傾いて後ろ脚に乗る動作では有りません。そのため肘から挙るテークバックが出来ています。

ジェイク•ピービー
最初に横からの映像が有りますが、ほとんど傾きません。肘から挙るテークバックが良い例です。

フランシスコ•ロドリゲス(Kロッド)
http://www.youtube.com/watch?v=XozTURJTPek&feature=plcp
この人は肘から挙るテークバックの代表格ですが、センターカメラから見る限り(後ろ脚の方向に傾かない)真っすぐタイプですね。

チャーリー•ファーブッシュ
http://www.youtube.com/watch?v=57HE3jtDpgg&feature=plcp
前に出て行く際に頭を残して後ろに傾く姿勢(ヒップファースト)を作ってますが、後ろに傾いて後ろ脚に乗って、後ろ軸を作る動作では有りません。因に後ろ足踵でトンと踏みながら前脚を挙げる感じが良いです。

対照的に後ろに傾いている例を挙げます。

ナフタリ•フェリ―ズ
http://www.youtube.com/watch?v=FfP7iIhQ9gQ&feature=plcp
前脚を降ろす時、後ろに傾き後ろ脚に乗り、それと同時に投球腕をぶら下げてから始動しています。

ティム•リンスカム
http://www.youtube.com/watch?v=xx9o17hdxG4&feature=plcp
典型的な後ろに傾くタイプですね。村田兆治に通じるものも有ります。ただ、投球腕を下げた時にやや意図的に内に捻っており、こうすると肘から挙るテークバックがまだやりやすいのですが、強調すると肩に負担がかかります。

アービン•サンタナ
http://www.youtube.com/watch?v=_RULqQe-jZc&feature=plcp
この投手も、後ろに傾いて投球腕を下げてます。アーム式、担ぎ投げと言う程では有りませんが、キンブレルなどに比べると肘から挙る感じが有りません。

ウバルド•ヒメネス
http://www.youtube.com/watch?v=L0AwYzeT7Ao&feature=plcp
典型的ですね。

アレクシー•オガンド
http://www.youtube.com/watch?v=Up-umSd-GmY&feature=plcp
最初に横から映しているので解りやすいです。


ただ、肘から挙るテークバックが出来るか出来ないかは、身体を後ろに傾けるか傾けないかでは無く、自力でグラブとボールを割っているか否かによります。つまり、重心移動との連動により割れている場合は、肘から挙るテークバックになるのですが、重心移動と無関係に自力で割ったり、降ろしたりするとアーム式や担ぎ投げになりやすいと言う事です。ですから勿論、身体を後ろに傾けないタイプでも自力でグラブとボールを割って担ぎ投げ、アーム式になっている例はいくらでもあります。

フレディ•ガルシア(元マリナーズのエース)
http://www.youtube.com/watch?v=T9rPu-bxLog&feature=plcp

ロイ•ハラディ(20勝投手)
http://www.youtube.com/watch?v=8gxKzibBbcA&feature=plcp

ブライアン•フェンテス(通算200セーブ投手)
http://www.youtube.com/watch?v=_55oMqsfZ4w&feature=plcp

このようにアーム式担ぎ無げで活躍する投手が多いのがパンチャーの特徴ですが、やはり肩肘の故障との関連は高いはずです。

また、ややこしい例として先にも少し書きましたが、自力で割りつつも投球腕を意図的に内旋しながら降ろすタイプがいますが、この場合、見かけ上、肘から挙るテークバックになります。ただ、肩には負担がかかりやすいです。「肘から挙るテークバックもどき」と言ったところです。

マイケル•ピネダ
http://www.youtube.com/watch?v=dHyEal6mhyc&feature=plcp

エディンソン•ボルケス
http://www.youtube.com/watch?v=B6j_fRl3UeU&feature=plcp

このように色々なフォームで活躍していますが、基本、肩肘を故障しにくく、そして100マイル近い豪速球の実例も有るキンブレルやKロッドのタイプが一番良いと思います。

ただ「後ろ脚の方に傾く」と言うことについては多少の注釈が必要になります。

それは「後ろ脚の方に(意識的に)傾いて、後ろ脚に体重をかける」と言う動作と「骨盤が前に出て行く際、慣性で頭が後ろに残り、身体が傾く」と言う動作は意味が違うと言う事です。

「骨盤が前に出て行く際、慣性で頭が後ろに残り、身体が傾く」動作は極自然な動作であり、良い動作です。と言うよりもむしろ上半身の角度について意識しないで自然に任せると、重心移動では少し頭が後ろに残ります。基本的に完全に上半身を真っすぐ立てたまま重心移動する方が難しいと言えるでしょう。

この点については「特に意識しないで投げた時、どのくらい重心移動で身体が後ろに傾いているのか」と言う事をビデオに撮影して知っておくのも良いでしょう。例えば、下の動画の時も、特に意識していなかったと思いますが、「重心移動の時に慣性で頭が後方に残り、自然に身体が傾く」動作が非常に良く表現されています。この動画の状態が「良い意味での傾き」を意味します。




次に、前脚を挙げる時、後ろ脚踵でトンと地面を踏む動作について、少し書きます。

この動作をする事で(特にメジャー式の脚挙げの場合)前脚が挙りやすくなるメカニズムについて、最近ようやく理解出来たので、まずはその事ですが、この理解が有った方が、本人としても意味が解ってる分、やりやすいでしょう。

下図はハムストリングスの働きを表現していますが、ハムストリングスは骨盤の座骨から始まり、大腿骨、下腿骨にいたります。

この筋肉が収縮すると股関節が伸展するわけですが「骨盤が固定された状態での股関節伸展は大腿骨を後方に振る動作を意味する」のに対し「大腿骨が固定された状態での股関節伸展は骨盤の後傾を意味する」と言う事がポイントになります。

つまり、後ろ脚の踵でトンと地面を踏むと言うのは、ハムストリングスの働きによる股関節伸展の作用で地面を押す事を意味するわけです。



そこでピッチングで前脚を挙げる時は、当然、真っすぐ立った状態をキープしようとしているわけですから「大腿骨が固定された状態でハムストリングスが収縮するので骨盤が後傾する」と言うケースに相当します。

ですから、この動作をやると、骨盤ごと後傾させながら前脚を振り子のようにスイングして振り上げるメジャー式の脚挙げがやりやすいのです。

この動画(CCサバシア)の一球目が解りやすいですが、トンと踏んで前脚を挙げる時、骨盤がクイッと良く動いています。(後傾しています。)
http://www.youtube.com/watch?v=ilhG8FNsaFo&feature=plcp

これによって勿論、前脚も楽(踏むと言う力の発揮の方向が重力に逆らわないので楽)に高く挙がるというメリットが有りますし、後ろ脚もハムストリングスで立つ状態を保ちやすいと言うメリットが有ります。

もう一点、この動作についての変更と言うか、コータ君の動きを見た上での「こうした方が良いのではないか」と言う事についても書きます。

今まで、後ろ足(右足)をトントンと2回足踏みする方法を奨めてきましたが、その足踏みが、その場で(大腿四頭筋を使った)腿挙げになりやすく、着地も爪先を使いがちでトントンと言うよりはペタペタと言う感じになりがちです。その結果、投げる際も後ろ脚ハムストリングスが効きにくい傾向が見られます。

例えば下の動画では1球目がペタペタと言う感じになっています。踵で踏めていないと言う事です。この場合、ハムストリングスが効きにくいので、前脚を挙げた後、後ろ脚の体重を支える力が弱く、膝がグニャッと折れて、全体的にヌル〜としたフォームになっています。
一方、2球目は踵で踏めているので、後ろ脚ハムストリングスが効くため、膝が潰れず、1球目のようなヌル〜とした感じでは無く、グワッと重心移動してズバッと投げるいい感じになっています。



1球目の方が(トントンする時の)重心落下点と右足の距離が開いており、そうなると大腿四頭筋を使った腿挙げにならざるを得ません。

現在は右足がプレートと平行になってからトントンと二回足踏みをしています。これはラボでそのようにお伝えしているからなのですが、二回踏むと「その場での(大腿四頭筋を使った)腿上げ的な足踏み」になりやすい場合があり、コータ君にもその傾向が有ります。

この足踏みを一回にする事によって(最初のトンで踏み、その軸足の踏みを利用して前脚を挙げてしまう。)踵で踏む感覚が良くなり、後ろ脚ハムストリングスの力が使いやすくなる可能性が有りますので、1回のパターンも是非試してみてください。

また2回踏むタイプもよく見ると、一回目は打者方向に向けていた軸足の爪先を45度ターンするための足踏みであり、2回目でさらに45度ターンして、プレートに平行にしている事が解りました。(或は一回目の足踏みでプレートに平行にセットし、平行にセットした後は1回だけ踏む)これは単純に私の調査不足でした。

そこで、ここで足踏みが良い感じの投手の足踏みについて評論したいと思います。

CCサバシア
http://www.youtube.com/watch?v=reApobCk-nU&feature=plcp
0.23からのシーンでは2回踏んでいるように見えますし、実際2回踏んでいます。しかし、0.44からの斜め横からのシーンを見ると1回目では軸足の角度を約45度ターンさせている事が解ります。つまり一回目は前足を斜め後方に引く動作と連動した足踏みだと言う事です。

チャーリー•ファーブッシュ
http://www.youtube.com/watch?v=57HE3jtDpgg&feature=plcp
この投手も二回かけて90度ターンするタイプです。つまりラボ的な表現では一回目は前脚を引きながら後ろ脚の膝をカクッと緩める動作に連動した足踏みだと言う事です。

アロルディス•チャップマン
http://www.youtube.com/watch?v=Z-otX7eZuPY&feature=plcp
良く見ると、プレートに軸足を平行に置いた後、微妙に二回踏んでいます。

ジャスティン•バーランダー
http://www.youtube.com/watch?v=45w374AJpCc&feature=plcp
1回目で軸足をプレートに平行にセットし、平行にした後にもう一回踏んでいます。(1.20〜)

フェリックス•ヘルナンデス
http://www.youtube.com/watch?v=2zTg-nbkmBQ&feature=plcp
0.13~を見ると、1回目で殆ど平行にし、その後にもう一回踏んでいます。

ジョニー•クエト
http://www.youtube.com/watch?v=R6N0bHLQWhA&feature=plcp
0.16からを見ると、一回目で平行にした後、素早く2回目を踏んでいます。

結論から言いますと、前脚を二塁手の方向に引きながら軸脚の膝をカクッと緩める時に一回目の足踏みをして、二回目の足踏みを利用して前脚を挙げると言うのが一番良いと思います。

このへんについてはホセレイエスさんのところで、動画で説明しようと思います。(投球については一人分で書ききれないので、ホセレイエスさんとコータさんの所で、相互に補完して完成させるつもりで書きます。)

ピッチングについては以上です。ここで書ききれなかった事はホセレイエスさんの方にも書きますので、そちらも参考にしてください。

コータ君の場合、プロを目指すとすれば内野手上位打線タイプだと思いますが、ピッチングにもかなり良い物があり、今から少しづつでも磨きをかけて行けば高校くらいになれば相当なものになると思います。骨格も良いですし、メジャー式の脚挙げも一回目でここまで出来た例もあまりありません。スローイング技術向上のためのピッチングと言うのは勿論有りますが、ベンチ入りの武器のためにもピッチングは役立ちます。(例えば野手でも高校1年からベンチ入り出来ると実戦経験が全然違ってきますし、それだけ「英才教育」を受ける機会が増えます。)

この動画などは、よく見ると素晴らしいです。(日本の場合だと中学や高校では指導者受けしにくいでしょうが。)しばらくはラボでのお手本の一つに使おうと思います。



バッティング編に続きます。

http://www.youtube.com/watch?v=nAebsgBmLl8&feature=plcp

新しい動画を見ました。ただ、この動画を見てまず思ったのは、始動する時の動きがやはり以前のままだと言う事です。

これはピッチングマシンの問題だと思います。実戦においてオートマチックステップはリリース前始動を必要とします。しかし、投手と違い、アーム式やレール式のピッチングマシンではリリース前始動が出来ません。(人間とマシンの違いは試してみると感覚で解ります)

ですからリリース前始動を必要とする速いボールや近距離からのボールをピッチングマシンで打つ場合、オートマチックステップは使えません。(もちろん人間のピッチャーなら速い球でもリリース前始動が出来ます。)

コータ君の動画を見ても、発射音の前に始動していますが、その動きは半ば意図的に後ろ脚に体重を移動する動きであり、オートマチックステップで始動した動きでは有りません。つまりマシンからボールが発射されるタイミングに合わせてステップして打っているわけです。

※)マシンでも、下の動画の距離、球速、だとリリース直後の始動が可能ですので、この環境ではオートマチックステップが使えます。(ただ、この動画では普段のクセか、ややステップの動きでタイミングを取ってます。)


一方、ラボの対面トスマシンの動画を見ると、始動する時の動きが違います。後ろ脚への体重移動が有りません。これが本来のオートマチックステップの動きで、あの球速ならリリース同時、或は直後の始動が出来るので、あのマシンだと無理無くオートマチックステップで打てるのです。


そこでどうすれば良いのかと言うと、ピッチングマシンは思い切って脚上げ型で打つ事をおすすめします。動画でのマシンの距離、球速(音がなってからインパクトまでの時間で推測)では、オートマチックステップは難しいでしょう。

マシンの利点はなんと言っても速い球を打てる事です。しかも人間が投げる労力を利用しないので数多く打てます。ですからマシンでは速い球を打てば良いのです。しかしその場合オートマチックステップは使えません。

ですから補助的な練習が必要になります。

まず第一に、もちろん人が投げる練習です。近距離から普通の球速で構いません。タオルを丸めたものでも使えるくらいです。この練習は勿論、オートマチックステップで出来ますし、オートマチックステップの感覚を取り戻すための練習です。この練習では比較的速い球を投げて、実戦におけるリリース前始動の感覚を磨く効果も有りますし、山なりの球を投げてマシンとの対比で緩い球を引きつける練習をする効果も有ります。


第二に、置きティーを利用する方法です。置きティーは自然に顔の向きがホームベース方向になるので、アウトコースを打つ練習に適しています。ですからティースタンドを置く場所は外角寄りで、ポイントは近く設定します。(無理に流そうとする必要は有りません)もちろん、それだとアウトコース一辺倒になりますから、インコースを打つ素振りと交互に行います。これはラボで行ったように、インコースの一点を見て振る方法です。置きティーではアウトローを練習し、素振りではインハイを練習するのが良いでしょう。これを交互に一回ずつ行います。もちろん、これもオートマチックステップの感覚を取り戻すための練習です。

この二種類の練習の組み合わせを行えば、マシンを脚上げ型で打っても、オートマチックステップのフォームはキープ出来ます。オートマチックステップの打者がマシンを有効に使おうとすれば(マシンの特性である速い球を多く打てると言う特性を利用しようとすれば)こういった補助練習を行うしか無いのです。

例えば、速いマシンの球を脚上げ型で20球打ち、次に(オートマチックステップに戻すための素振りを5回した後)手投げで速い球と緩い球を交互にオートマチックステップで20球ほど打ち、次に置きティーと素振りでアウトローとインハイを交互にオートマチックステップで20スイングほど練習し、最後に仕上げとして手投げで10球ほど打つ(オートマチックステップ)等のメニューが考えられます。

因に脚上げ型についてはラボではやってませんが、オートマチックステップの構えと大きく違うのはスタンスの広さです。脚上げ型の場合、スタンスを広くすると脚を上げて後ろ脚に乗る時に体重移動が大きくなり、安定しませんから、ややスタンスを狭く、重心を高くして構えます。オリオールズのアダム•ジョーンズの構えが最も参考になりますから動画を見てください。

アダム•ジョーンズ
http://www.youtube.com/watch?v=1w8n5JHDVOA&feature=plcp(横映し有り)
http://www.youtube.com/watch?v=1YdkhDZOMhk&feature=plcp
http://www.youtube.com/watch?v=dAYdu2UUfjQ&feature=channel_video_title(横映し有り)
http://www.youtube.com/watch?v=x7PQIKK-iKw&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=Kg_ciZf2oC4&feature=fvsr(横映し有り)

補足としては、構えでは体幹部操作2の捻りを入れて、後ろ脚股関節を軽く割ったラインにしてやると、前脚を上げた時に後ろ脚に体重を乗せやすくなります。しかし、捻り過ぎると身体の回転が制限されて、両手で振り抜いた時にフォロースルーが小さくなりますから、そのさじ加減が重要です。基本的には、アダム•ジョーンズが両手で振り抜いたときのスイングとフォームを参考にすれば、ほとんど間違い有りません。

2010年のアダム•ジョーンズはほとんど全て両手で振り抜いています。
http://www.youtube.com/user/MLBglobal/videos?sort=dd&query=adam+jones&view=0&page=2

その他の打者では、脚の挙げ型ではアレックス•ロドリゲスも参考になりますし、ホセ•バティスタや左打者としてはジョーイ•ボットも良いです。

アレックス•ロドリゲス
http://www.youtube.com/watch?v=Yc2yKJNQXlU&feature=relmfu
http://www.youtube.com/watch?v=HPMVg8wceM8

ホセ•バティスタ
http://www.youtube.com/watch?v=7o2zUnHTIL0&feature=plcp
http://www.youtube.com/watch?v=T9ASvCc82Gs&feature=channel_video_title

ジョーイ•ボット
http://www.youtube.com/watch?v=SfA2zzNZJuM&feature=plcp(横映し有り)
http://www.youtube.com/watch?v=1p6NrGNQrh0&feature=plcp

マーク•トロンボのホームラン競争の時のフォームも良いです。(普段は二段ステップ)
http://www.youtube.com/watch?v=8OyqPcVKFiA&feature=plcp

もちろん、必ずしも前脚を高く上げず、少し浮かせる程度でも良いです。

マニー•ラミレス
http://www.youtube.com/watch?v=k-H2-WoWhrM&feature=plcp
http://www.youtube.com/watch?v=cGybcIIVzAg&feature=plcp
http://www.youtube.com/watch?v=t9gufG1bCO8&feature=plcp

なお、脚上げ型で非常に重要な技術論として、脚を上げて後ろ脚に乗った所から、いきなりバットを出そうとする事です。(始動する)つまり、下図のアレックス•ロドリゲスで言うとオレンジのコマが始動ポジションとなるわけです。オートマチックステップの場合、始動ポジションは構えそのものです。


つまり、良く言われている、テークバックしてトップを作ると言う動作は、少なくとも意識的にはやりません。その動作は始動する(バットを加速しようとする)と無意識で起こります。テークバックしないで、上の図の2コマ目からいきなり振りに行く事です。「2コマ目の形で引きつけて、一気に振り抜く」と言うとイメージしやすいでしょう。


ただ、誤解して欲しく無い点として、今回コータ君に脚上げ型でマシンを打つ事をおすすめしたのは「コータ君の場合」と言う話では決して有りません。
例えるなら「オートマチックステップ打者 育成プログラム」と言うものが有ったとすると、そのプログラムの中にも「高速のマシンを脚上げ型で打つ」と言うのは有ります。

なぜなら高速球に身体と目をならす事は非常に重要であると同時に、その高速球を効率的に練習出来るのがバッティングマシンだからです。そしてバッティングマシンではリリース前始動が困難であると言う事を踏まえると、どうしても「高速のマシンを脚上げ型で打つ」と言うプログラムが必要になってくるからです。
そして、その後に動作と感覚をオートマチックステップに戻すプログラムも必要になります。そのためには前述した手投げや置きティー、素振りも使えますが、もう一つ、バックネットからの映像を利用したバーチャルトレーニングも利用出来ます。

なお、脚上げ型に取り組むにあたっての落とし穴的なポイントを二つほど上げます。

1)両手で振り抜いたときの躍動感が、オートマチックステップに比べると出にくくなります。大きく振り抜こうとすれば前脚が開きやすくなり、前脚の壁をキープしようとすればコンパクトなフォローになりがちです。ですから、ある意味では脚上げ型の場合、片手フォローの方が相性が良かったりします。しかし、そこが正に落とし穴で、一回やって良かったからと言って片手フォローにハマると、スイングに悪いクセが付きます。アレックス•ロドリゲスやマニー•ラミレスの成績も、やはり私の危惧した通り、下降線になりました。

2)脚上げ型でフォームを固めると、オートマチックステップに戻しにくくなる事があります。ただ、オートマチックステップから脚上げ型は楽に出来ます。これはオーバースローはいつでもサイドスローに出来るのに対し、一度、サイドスローにするとオーバースローに戻しにくくなるのに似ています。つまり、基本的には脚を上げて打つ方が楽で、楽な方から楽でない方に戻すのは難しいと言う事です。ですから、コマメにオートマチックステップによるスイングを保つ事が重要で、逆に、それによって脚上げ型でのスイングも良い状態に保たれます。



その他、オートマチックステップでのスイングについて。

ラボ当日のテーマとして


(1)下半身の力を使えるための形を作ること(股関節を割る、ラインを作る)
(2)下半身の力そのものを鍛えること(黒人化トレーニング)
(3)打撃の中で、その力を使えるための、技術(揺らぎを利用した構え作り、揺らぎから打ちに行く間)

の3点を上げました。この3つが今後もテーマになります。
それぞれのテーマにおいてラボでのスイングの中で良い要素が出てきました。例えば、揺らぎを止めないでリズムに乗ったまま打つスイングでは、かなり始動時に無意識で腰を突き上げる動きが出てきました。こうした振り方も良い練習になります。



この動画くらいの重心の高さなら大腿四頭筋が邪魔しないで良い動きが出来るのですが、それ以上、重心を下げてスタンスを広げると、まだまだ膝で体重を受け止めて大腿四頭筋が緊張してしまうようです。

ですので「広く、低いスタンスからの素振り」「中間のスタンスからの素振り」「狭く高いスタンスからの素振り」の3種類を交互に繰り返すのは良い練習になるでしょう。

以上です。

それではまたがんばってください。5回の中で地道ながら着実に進化したと思います。最後の対面トスでの動画はかなり良い線行っています。