2013年3月27日水曜日

ホセレイエスJr君 3回目

本日は御来店ありがとうございました。



まず、すぐにでも修正した方が良いポイントは、クイックでの手の位置で、もう少し体に近く、もう少し肘より上に手が来るようにしてください。体から離れると爪先重心になりますし、手の位置が低いとテークバックで肘から挙りにくくなります。肘は今の位置のままで手だけ上に挙げるということです。このへんは肩や肘の故障とも関わる問題ですので、重要です。

写真で言うと、今青○の位置に有る手を赤○の位置に置くようにしてください。


バッティングに関しては、ホセレイエスJr君の、最も大きな課題の一つは、股関節を割った形を作るということです。ラボでは出来ているので、本来は出来ないということでは無いと思いますから、そこをチェックしてください。それが出来るようになると、もっと前脚股関節が良い感じで割れて着地し、腰の回転も大きくなると思います。

まず、股関節を割るストレッチでは、爪先を開き過ぎず、アウトエッジに荷重し、脚の内側のラインがたわむ感覚を重視してください。そして、実際に構えを作る時は、割る意識は必要有りませんので、揺らぎを利用して割ると、自然に割れるようにしてください。そのためにも股関節を割るストレッチを普段からしておく事が大切になります。

構えで股関節が割れた状態を作るための感覚的コツを書きます。下図のように、アウトエッジ荷重で爪先を開き過ぎず、脚の内側のラインにたわみを作ると、両脚の間に大きなボールが挟まっているような意識が生まれます。


この状態から前脚の膝を内に、後ろ脚の膝を外に向けた形を作っても、そのボールの意識が無くならないようにしてください。そうすると、その感覚と、アウトエッジ荷重との関連も解ると思います。そして、それが「両脚股関節を割ったうえで、後ろ脚の膝が外、前脚の膝が内に入る形」が出来た時の感覚です。この感覚を忘れないようにしてください。

ただ、アウトエッジ感覚とボールが挟まっている感覚を誇張し過ぎると、おかしな事になって来るので、ここでもバランス感覚が重要です。フワッとボールが挟まっているかいないかと言うようなソフトな感覚が重要です。ただストレッチでは誇張してボール感覚がクッキリ生まれるようにしておいてください。打撃の構えではストレッチ程重心を下げない(股関節を割らない)ので、感覚もそのぶんソフトになるわけです。

次の今回の動画を見ていて気になった点は、当日、捻りを利用して懐を作る事等を重点的に行なったせいか、写真のようにやや上半身が捕手側に傾いている構えになっている事です。

これについてはゴルフの左一軸打法を例に説明しましたが、右耳、首筋から左足に至る前軸を意識した素振りを取り入れる事によって修正してください。

このように人の字が出来ます。なお、この前軸は捻りを入れる事でより強く感じられます。前言と矛盾するようですが、捻ろうとした時に水平の捻りや後ろに傾く動きが生じると良く無いということです。そうでは無く後ろ脚股関節のラインに沿った捻りが出来ると頭が若干投手寄りに出て来ますので、それによって前軸が意識しやすくなるのです。そして、前軸素振りで重要な点は、後ろ脚股関節が割れていなければならないと言う事です。捻りを強調して前軸が出来るのですから、それに連動して後ろ脚股関節が割れるということです。それによって後ろ脚サイドのパワーも使えるということです。これが出来なければ、左一軸では力強く振れません。

イメージ的には下の写真のようになります。つまり「前軸に乗せて、後ろ脚を割る」と言う事です。

もちろん、この意識はあくまでも前軸を作るための練習のための意識であって、最終的には全体のバランスの中に消化されなければなりません。ただ、前軸素振りが上手く出来たら、前軸が効いたスイングになりますから、巻き戻しが力強くなります。そこを見るようにしてください。

キューバのグリエルも捻りによって頭が投手寄りにきます。このアングルから見ると、それがやや強調されて見えますが。

捻りを強調してオープンスタンスで構えるブランコも良い位置に頭が有ります。(オープンスタンスは特にオートマチックステップの場合は良く無いですが。)

ケン・グリフィーJrも、良い位置に頭が有りますね。ライアン・ハワードやバリー・ボンズも良い例です。

そして、この「前軸素振り」は「捻って体の捕手側に懐を作る素振り」や「捻って後ろ脚が効いて地面を捉える感覚を強調した素振り」とのセットでやると良いでしょう。そして最後は「Xのライン」でバランスが取れるようにすることです。

打撃に関して、その他の話題ですが、当日の動画ではやはり置きティーを多用した悪影響も出ています。ただ、その辺の事は一過性のもので、直ぐに治ります。(集中力を保つ意味や、打球でスイングの善し悪しが判断しやすい意味、短時間で数が打てる意味からも、置きティーを多用しました。)巻き戻しも、正面からのボールを打つと、もっと強くなって来るでしょう。置きティーの悪影響と言っても、それは素振りやフリー打撃中心に戻せば、すぐ治る事ですし、さほど気にする必要も無いですが、普段の練習でも置きティーやトス(斜めからのティー)には出来るだけ頼らない方が賢明です。重要な事は顔の向きによってスイングが変わって来るということで、その理屈と、修正方法(投手方向あるいはインハイ気味のポイントを見つめた素振り)さえ掴めていれば、悪い練習というほどでは有りません。

つまり、ティー打撃で顔の向きが変わると手首の返るゾーンが下図のように違って来る訳です。こうした面が、当日のラボでの動画にも見られます。

また、最後に撮影した置きティーで前脚の爪先が開いていますが、これは最後にテスト的に行なった「前脚股関節伸展を使って骨盤を回転させるトレーニング」のマイナス面が出たのかもしれません。あのトレーニングはやり過ぎないようにしてください。

また、もう一つ、揺らぎが雑でせわしなくなりやすい傾向が有りますので、腸腰筋ストレッチの後、骨で立つ感覚を確認し、揺らぎ体操で体の芯の軸を中心にゆったり揺らぐ感覚を掴むようにしてください。動画のアンドリュー・ジョーンズは良い例です。そして止まってから打つ事を重視してください。

ハムストリングスを使って立つ事が上手くなると(力の発揮する方向と重力が一致するから)筋肉に負担がかからないので、止まっても非常にリラックスしていられます。そうすると長く止まっていられるので、タイミングについて考える要素が一つ減りますからシンプルに打てるようになります。下の動画のエイドリアン・ベルトレイは、それが非常に上手く出来ています。ベルトレイは腸腰筋が効き、ハムストリングスで立つということについては非常に上手い打者です。重心が高いので骨で立つ感覚に近いでしょう。


ただし、必ずしも、長く止まるのが良いということはありません。実際、この動画のベルトレイは長く止まり過ぎたせいもあり、良い意味での重心移動の流れが寸断されて、やや後ろ軸のスイングになり、前脚が開き気味です。(特にベルトレイの構えは捻りが小さいので後ろ軸になりやすいですが。)

ただ、実戦では投手にじらされて「長く止まらされる」ケースもあります。そうした中で高いパフォマンスを発揮する上でも、ハムストリングスを効かせて立ち、長く止まって待てるということが重要になるわけです。

投球編

かなり良い感じになって来ました。ただ脚の挙げ型は修正しきれなかったのですが、それについては後日書きます。まだ前脚が突っ張り気味で、そのぶん脚の挙げ型がせわしなく、また重心が爪先寄りに来る問題は残っています。先取り的に書いておくと、恐らく振り子のようにブラーンと振るイメージが強すぎるのでしょう。確かにそういうふうに言いましたし、それは間違いでは無いのですが、あくまでも導入期にイメージしやすくするための表現で、そのイメージのデメリットが出てしまうと、今回のように前脚が畳めないようになります。極々かんたんに言うと、振り子のヒモの付いた重りがスイングするイメージが脚を伸ばしたままにしているのだと言う事です。

腕の振りについては良いものがあります。

日本人にはあまり見られない形ですが、中南米系のパンチャータイプには典型的に見られる形です。もちろん、ペドロ・マルティネスもそうです。(ペドロのフォームをよく見てる人はホセレイエスJr君のフォームを見て、絶対に「ペドロだ!」と言います。)私はそういう投手を山ほど動画で見てますが、本当にこうしたフォームは中南米では右投手の基本形と言っても良い程スタンダードなものです。特に2コマ目から3コマ目が特徴的なのですが、通常の投球理論的な表現で説明すると、投球腕が最大外旋に至るシーンが2コマ目から3コマ目です。スインガータイプならこのシーンで肩関節外旋と同時に肘が畳まれるのですが、パンチャータイプの場合は外旋すると同時に肘が伸びて行き、そのままリリースに向かって投球腕がスイングされます。このあたりを見ても典型的なパンチャーのスイングになっている事が解ります。前脚が伸びているのもパンチャーでは良い事です。いわゆる「前脚が突っ張る」フォームなのですが、突っ張るフォームで良く無いのは、投げた後に後ろ脚が前に出て来ないフォームです。パンチャーであっても、これは良く無い形なのですが、突っ張った後に後ろ脚が前に出て来て一塁側に着地するのは、パンチャーの正しい動きです。

ただ、腕の出所は、後少しだけ高い方が良い感じがします。このあたりは勘でしか無いのですが、もう少し後ろ脚の力が使えて重心移動が大きくなると、腕の出所の少し高くなると思います。そして、そのための改善ポイントが問題となっている前脚の挙げ方だと言う事です。

その後日書くと書きました、脚の挙げ方ですが、下の動画の練習をやってください。感じがつかめたら繰り返しやる必要は有りませんが、少しづつでもやって、出来るだけ早く感じがつかめるようにしてください。

走るときのような腕振りになっていますが、その他のポイントは、ピッチングでの脚挙げのポイントと同じです。軸足踵で踏んで前脚を挙げるなどです。ホセレイエスJr君がもう一つで来ていないのは、脊柱をやわらかく使う事ですが、これも振り子のイメージのせいかもしれません。上半身を背中側に倒すと前脚が挙るメカニズムを頭を倒さないで元の位置に残して行なうと、脊柱が柔らかく曲がってくれます。そうすると楽に前脚が高く挙ります。

私やまーやんさんのように、脚を挙げたところで膝が曲がるようになってください。現状では脊柱の彎曲や骨盤の回転が上手く使えておらず、股関節屈曲にたよって前脚をスイングして挙げているため、大腿四頭筋の緊張(収縮)によって、膝が伸びたままになってしまっているのです。骨盤の後傾と、脊柱の彎曲を使って前脚を挙げる事が出来るようになると、大腿四頭筋をあまり使わなくて済むので、膝が曲がりやすくなります。(膝は曲げようとしなくても、股関節屈曲によってハムストリングスが伸張されるので、その反射で自然に曲がります。)ホセレイエスさんなら既に上記の内容が理解出来ると思い、比較的高度な書き方をしていますが。

現状では、膝が伸びているので、足部が体から離れ過ぎ、後ろ脚が爪先荷重になりやすく、それがハムストリングスを使いにくくしています。(使えていない事は無いですが。)これが、もっと膝が曲がるようになると重心が踵側(頸骨の真下)に乗りやすく、ハムストリングスを使いやすくなります。この辺が改善されると、もう少し重心移動が大きくなり、腕の出所ももう少し高くなると思います。

振り子のイメージと言うのは、広島の前田健太や藤川球児、ヤンキースの黒田のように典型的な日本人式の脚の挙げ方からメジャー式に転換する場合に初期の段階で使うイメージの言葉掛けなのですが、ホセレイエスJr君くらいの段階になると、もう必要無いでしょう。それより、骨盤の回転(後傾)を使うイメージに切り替えた方が良いです。そして、前脚は意識から消すくらいの感覚で良いです。なれて来ると、そうした事を別段意識しなくても体が憶えてくれますが、とっかかりとして、そうしたイメージを持って下さい。

下図はイメージの良い例と悪い例です。良い例のように、体幹部に近い部分を意識すると、良い感覚が掴みやすいでしょう。

振り子のように前脚を伸ばしたまま挙げてしまうと、大腿四頭筋は緊張する(股関節屈曲と膝関節伸展を同時に行なうと大腿四頭筋を最も使う事になる)し、また、ハムストリングスは極度に伸ばされます。(股関節屈曲と膝関節伸展を同時に行なうのはハムストリングスが最も伸びる運動なので、ハムストリングスの静的ストレッチで使われる)このように大腿四頭筋が緊張しハムストリングスが突っ張った状態だと、前脚を挙げている状態が苦しくなりますから、おそらくその感覚が有るので、現状のようなせわしない前脚の挙げ方になっているのでしょう。前脚の上げ方がせわしないと言うのは現状のフォームの大きな問題点の一つです。

また、現状では前脚をスイングして挙げたいイメージが強いせいで、後ろ脚をプレートに向かって踏み出す動きが大きくなっています。つまり、それによって前足を後方に残し、前脚をバックスイングする効果を生み出しているのです。もちろんこれはワインドアップのステップにおける重要な効果であり意味なのですが、強調しすぎると(プレート上に)踏み出した後ろ脚に体重が乗りにくく(身体から前に出過ぎるので)後ろ脚の踵の踏みが弱くなる問題が生じます。

もう少し、身体の近くに後ろ脚を踏み出してやると、ハムストリングスを使った踵の押しが強くなるので、そのハムストリングスの力で骨盤が後傾し、前脚が楽に挙るようになります。(これが後ろ脚踵でトンと踏むと前脚がポンと挙るメカニズムです。)この辺も改善の余地がある所です。

なお、ピッチングについては、下地としてのフォーム作りとしては脚を出来るだけ高く挙げたダイナミックなフォームを作っていきたいのですが、最終的にバランスを崩しやすく制球が乱れる場合、そこから実戦の中でコンパクトにしていく対応も求められます。


では、最後、もう一度打撃について書きます。

打撃実戦編

トップ型のパンチャータイプの大きな命題の一つが、やはりトップ型で構える事によるバットの重さと言う問題です。これは振る力を付けるための練習で力を付けて行くのは当然重要ですが、実戦の中で、どのタイミングで構えを作るかということをよくシミュレートしておく事も大切です。

例えば、youtubeには下のような動画がいくらでも有りますが、こうした動画を使って、ワインドアップ、セットポジション、クイックモーション等によって、どういうタイミングで構えを決めると、構えの時間が短くなり、なおかつ構え遅れないかということを研究してください。(バックネットからの撮影でなくても、内野席や、最悪、外野から撮った動画でも使えます。ポイントは編集していない定点撮影ということです。)




また、ホセレイエスJr君の、この点に関する課題としては、もう少し止まって(静止して)待てるようにした方が良いですね。

揺らぎにともなって、バットが回転するのですが、そのバットの運動を受け止める手や前腕部の筋肉も緊張を強いられます。これは試してみると直ぐに解ると思いますが、バットが回転しぱなっしだと、特に緊張しやすいのがトップハンドの前腕部です。そして、トップハンドの筋肉が緊張した状態でスイングに入るので、スイングもバットを捏ねるような軌道になります。以前、自宅ゲージの動画で正面から撮影したものの中に、そうしたスイングが何度か有りました。この場合、手が出るのが(体の回転に対して)早くなってしまうので、体の回転も途中で止まってしまいます。もしかしたら、ホセレイエスJr君の「体の回転が小さい」と言う問題も、これが原因(又は原因の一つ)かもしれません。実際、コネているスイングではかなり回転が小さいです。

この動画の、投手からのアングルの二球目は特に捏ねていますね。そこで、気になったのは「最近、長打が出なくなった」と言う事についてですが、こうした筋肉の緊張に伴う問題は、時間が経過すると共に悪化してきます。そういう目で見ると、この一つ前の動画に比べて、スイングが小さくなってるようにも見えます。

完全に静止しても、3〜5秒くらいは待てます。それでも相手が投げて来なければタイムをかければ良いのです。最初に揺らいでいて、構えが出来たら、後は止まって待つようにしてください。ずっと揺らぎっぱなしだと特にトップハンドの前腕部が緊張しやすいからです。そして、タイミングによっては完全静止の直前に投げられる場合も有るかもしれませんし、静止から3秒後に投げられる場合も有るでしょう。この辺のバラツキは想定の範囲内としなければなりません。そして、静止してから5秒くらい経っても投げて来なければタイムをかけたら良いのです。(揺らいで待ってる時間も合わせると10秒近く待ってる事になりますから、タイムをかけても、当然の状況です。)

特に、バットを支える手首から前腕部に余計な力みを作らないために、静止して待って打つ感覚を身につけた方が良いでしょう。今回の動画で、ホウキを振っているものが有りますが、あの時は静止してから振ると言う練習だったので、それが出来ています。あの感じで打つということですね。以前の試合の動画では構えが決まってもずっと揺らいでいますが、構えが決まったら、じょじょに揺らぎを止めて行った方が良いです。

素振りの中で、揺らいで〜止まって〜振る と言う事を習慣付けてください。特に、止まってから振るまでのタイミングを1秒にしたり3秒にしたりと自分でバラツキを付けると、より実戦的になるでしょう。

最後に、構えの力を付ける練習は、その後に必ず腕回しやシャドーをして、特に右肩の動きを柔軟に保つようにしてください。そしてまたやり過ぎない事も重要です。(一日5回〜10回くらいでしょう)地道にコツコツと続けてください。

今回は以上です。