2013年5月1日水曜日

首位打者さん 1回目(前編)

ご来場ありがとうございました。



野球の経験は中学の3年間だけと浅いので、振りは遅いです。ただ「形」に関しては塚口理論のポイントを、初回にしてはかなり的確に抑えている事が解ります。(予備知識ほぼ無しの状態での初回です。)特に構えに関しては非常に雰囲気が出ています。(斜め前から見たアングル)なぜ、そのような事が可能であったのかと言うと、首位打者さんは骨格の形態の良さと言う面では類い稀なるものがあるためです。腸腰筋その場ステップについても、最初からこれだけ腸腰筋の伸張反射が使える例は今までになかった事です。

そして、それは私が今まで骨格の動きの関係について、考えて来た事を見事に証明してくれる結果となりました。

首位打者さんは、胸椎の後彎が顕著な体型で、これは黒人にもいますが、白人や日本人の身体機能が優れた人に多い特徴です。肖像画から類推するに、宮本武蔵もこのタイプであったでしょう。ややうつむき気味の写真ですが、なで肩でもイカリ肩でも無い肩のラインと、凹んだ胸部、鎖骨の浮き上がり具合、突き出し気味の首が、この体型の特徴を示しています。

下は胸椎後彎曲が明確なタイプの黒人(&黒人系)の動画です。首位打者さんの骨格との共通点が見て取れます。





ただし、今までの観察経験上、こうした骨格的特徴が有るからと言ってかならずしも運動神経が良いとは限りません。先天的には優れた資質が有りながらも、その後にあまり運動していない人はやはり運動能力が低いですし、野球は反復練習による要素が大きいので、なおさらです。ただ、有利な資質である事は間違いありません。

例えば、写真のように股関節を割るストレッチで腕を内に捻りながら肩甲骨を外転させると、非常に大きな胸椎後彎のラインが出るのも、このタイプの特徴です。また、かなり大きく肘を挙げて、脇を開き、グリップを深く握っても(ストロンググリップ)、グリップのコックが効いた形を作れるのも、特徴です。もちろん、これらは野球をする上で有利な事です。

メジャーリーガーでこのタイプの典型として思い浮かぶのが、アスリート型プレイヤーとして有名なキャメロン・メイビンですね。

このタイプの特徴として、胸椎の後彎により肩甲骨が外転しているぶん、ボトムハンドの引きは小さいのですが、その反面、スイングがかなりダウン軌道になり、素振りなどではゴルフスイングのようなアップライト(直立した、垂直面に近い)スイング軌道を描く事が多いのです。ただ、体重移動は小さく、後ろに体重が残り気味で前脚が開きやすいのも、このタイプの特徴です。キャメロン・メイビンのスイングは、その特徴を非常に良く表しています。また、メイビンも肘を大きく挙げて、グリップを非常に深く握っているのに、しっかりとコックが効いているのが解ります。

首位打者さんのスイングにも、そうした特徴が良く出ています。

そして、こうした骨格は野球選手には有利です。ベーブ・ルース、ジョー・ディマジオ、テッド・ウィリアムス、ミッキー・マントルは、全て胸椎の後彎が顕著な体型です。

私はこうした体型を「背中がしっかり有る」と表現出来ると考えています。猫背ではないのです。そして野球選手は「背中がしっかり有る」ほうが有利なのです。

ジョー・ディマジオ

テッド・ウィリアムス

ベーブ・ルース

ミッキー・マントル

彼等は皆スインガータイプなので、スイングの特徴はパンチャーとは違いますが。こうした骨格の場合、肩甲骨が外転しているので、肩が内旋しやすく、そうなると、前腕の回内からグリップのコックも効きやすく、また(手を体の前に出したとき)手の平が体側を向きやすいので、モノを抱え込む上で有利です。

この写真のジョー・ディマジオは肩甲骨が外転しているので肩関節が内旋し、しっかりとバットを体の中に抱え込む事が出来ているので、良い意味でバットを体と一体化させる事が出来ています。これが出来るため、胸椎の後彎がしっかりと形成されている方が野球にとっては有利なのです。もちろん、それは脊柱の性質(生理的彎曲と言われるS字カーブを描く)を考えても自然な事です。
つまり、バットのような重い物をしっかりと自分の体の内側に抱え込む事が出来るので、バットを体と一体化させて扱う事が出来るのです。これは、恐らく四足獣、特に人間の祖先であった猿が樹上生活をしていた事とも関係があるのでしょう。猿は木の枝を掴んで、木から木へと移動しますが、木の枝を握る上で有利な構造がバットを握る上でも有利に働くのです。昔のバットは重かったので、その辺が特に重要であったのでしょう。そして剣術で有名な武蔵の体型も、その事を意味しています。

↓バリー・ボンズ 黒人体型ゆえに、肩甲骨が外転し、肩関節が内旋している。その結果、バットを強固に体の内側にホールドし、体と一体化させる事が出来る。これがボンズ特有のバットをクイクイと動かすタイミングの取り方を可能にした。もちろん、筋力も無関係では無いが、ボンズはバットが体幹と一体化していたので、クイクイとバットを動かしても腕に頼った打撃にはならなかった。元の骨格の良さがあるから出来る事で、日本人体型であれをやると、体とバットが一体化していないので、腕が疲労し、打撃も腕力頼みになるのが普通である。(ラボでボンズのフォームを真似る事を奨めていない大きな理由の一つがこれ)


ひとつ言える事は、こうした骨格的に恵まれている人の場合、やればやっただけ、良くなっていく場合が多いと思います。特に、素振り一つとっても条件が悪い人の場合、結構、苦労したりするのですが、首位打者さんの場合は、振れば振るほど良くなって行くでしょうし、段階的にもそういう段階にいます。例えば重いバットを振っても、骨格が悪い人だとデメリットが大きく出たりしますが、骨格が良いとデメリットが出にくいのです。ですから、少なくとも硬式木製レベルの重さのバットを、最大限の力で速く振る事に集中し、スイングを繰り返して下さい。骨格の条件が悪い人、普通の人には余りこういう奨め方はしません。間に軽いバットを振る重要性を強調します。しかし、首位打者さんの場合だと、特に現時点では余りその必要を感じません。自信を持って硬式木製の重いバット(竹や、竹との合材などで、安いバットが売ってます。例1 例2)を振り込んで行くと良いでしょう。(マスコットバットは止めて下さい。)

そして、もう一つ重要なのは瞬発力です。置きティーを見ても、打とうと思ってからバットが出るまでも遅いです。そして、そこからのスイングも遅いので、まずはスピード、そして瞬発力を高めて下さい。そのためには短いバットを振るのが良いです。例の短いバットですね。あの青い短いバットを重りは無くても良いので、如何に速く振り抜くかと言う、その一に集中して振り抜く練習をしてください。ダッシュは比較的速い方なので、スイングもバットを振り込めば速くなって行くでしょう。

ここまでを纏めると、まず重いバットを振って、振る力を付ける事と、短いバットを出来るだけ素早く振る事で瞬発力を付ける事が重要です。骨格の形態が悪い人だと、こうした練習方法一つとっても、間に軽いバットの素振りを挟む事が非常に重要になったり、色々と気を使う必要があるのですが、首位打者さんの場合は、骨格の形態が良いので、割と大雑把に重いバットを振って力を付けて行くと言う方針で良いでしょうし、それだけに、やれば、ある程度のレベルまでは割と早く到達出来るのではないかと思います。すくなくともしならくはその方向性で、まず振る力を付ける事が大切です。

後編に続く。