2013年5月12日日曜日

林さん甲子園 5打数3安打(決勝二塁打)2013/5/12


ハイライト動画


特待生の林さんがやってくれました。関西六大学リーグでの甲子園球場における関関戦(関西大学vs関西学院大学)2連戦、0勝1敗で迎えた2戦目で5打数3安打の大活躍です。しかも延長11回、決勝点となるタイムリーツーベースヒットを打ち、試合を決めてくれました。(試合詳細記事

新聞記事

しかも、フェンス際のファールフライを好捕するシーン有り、盗塁ありと、走攻守全てに渡って活躍が有りました。

この3日間(雨で中断となった2試合目を含む)を観戦した感想としては、当然と言えば当然かもしれませんが、試合慣れしてる印象を受けたというか、特に打撃でも、”理論が先行して無理な事をしている感” が無かったので非常に安心しました。打席での反応(スイングを途中で止める能力や、空振しないでファールにする能力)も良かったです。これだと、ここから「スイングスピード」「脚力」「肩の強さ」に磨きをかけていく事に安心して集中出来ます。また、この2試合の中で一貫して、投手に球数を投げさせる事が出来ていたのも良い点です。見逃し方も非常に良かったです。(特に今日)

決勝タイムリーツーベースを放った5打席目もファールで粘った末のヒットです。

5打席目ピッチバイピッチ


次の動画は2012年に行なわれたマリナーズ対アスレチックスの東京ドームでの開幕戦を撮影したものです。全て左打者の動画ですが、その中に林さんの動画も混ぜています。同じカメラで撮影した動画ですので、スイングスピードなどの比較が解りやすいでしょう。最高レベルの舞台に立っている選手と比較する事で、感じる事の出来る違いなども有ると思います。因に個人的にはスピードというよりもメジャーの打者の方が「筋力とバットの重さの比率」の違いで、バットを軽く感じているだろうなということです。これは技術的な問題では無く単純にパワーの問題ですね。やはりNPBを目指すにしても、最高レベルの選手のパフォーマンスが目標に有った方が良いと思います。逆説的に言えば、このくらいのパフォーマンスが発揮出来れば、メジャーの投手から打つ事が出来るとも言えるわけです。

※)打球音の違いの原因はドーム(室内)と屋外(甲子園)の違い、それに応援の有無が大きいです。

パワーについては確かに重要で大きな課題でも有るのですが、林さんの場合だとあまり極端な事をするよりも試合でのパフォーマンスを考慮しながら地道に向上させて行く方が良いでしょうね。その方が今の立場の利点を活かす事が出来るからです。また今回の観戦で打席内での器用さと言うか反応の良さと言う長所が良く解ったので、それを活かすためにも出来るだけ試合に出られる方向を選んでキャリアを積み重ねて行く方が良いのかなとも思います。その中で年輪を積み重ねて行くようにパワーを積み上げて行くと言う方が良いでしょう。

ただ最終的にパワーは追求して行きたい重要なテーマの一つです。が、やり方を間違えるとデメリットが出るので難しいテーマでもあります。

★前軸と巻き戻しの強さを伴うメジャー流スイング

フォーム的には、まだ肝心のスイング本体がプリンス・フィルダーと言うより青木に近いので、そのへんを「スイングもメジャー流」にしていく事ですね。大雑把に言うと、この事につきると思います。試合での空振が下の素振り動画のようなスイングになれば良いのですが。今の構えからこういう(メジャー流の)スイングが試合で出来るようになると、ちょっとしたセンセーションになると思います。実際にパワーが発揮出来る事ももちろんですが、プロ関係者の目にも止まりやすくなるでしょう。


簡単に言うと前軸の効き方の問題が大きいです。一般に「素振り→フリー打撃→試合」の順番で前軸を効かせる事が難しくなります。解りやすい例では試合では前脚を開いて打つ日本の打者も素振りでは前軸をキープ出来ています。理由は色々考えられるのですが、結論から言うと素振りでの巻き戻し方が上の動画くらいの感じだと、やはり試合では巻き戻しが出にくいのかなと言う感想です。素振りでの前軸の効きと巻き戻しの躍動感がもう一段良くなると、試合でも上の動画のようなスイングになるでしょう。

打ってから走り出すまでの動きもプリンス・フィルダーのようになれば理想的ですが、いきなりフィルダーとまでは行かずとも、ひとまずはチュ・シンスくらいにはなるようにしたいものです。

チュ・シンスの前足を見て下さい。ホームベースと比較すると解りますが、打ってから走り出すまでほとんど後ろに引いていない事が解ります。

一方、林さんの場合は、バットがフィニッシュの位置に納まる以前に、既に前足を後ろに引いてしまっています。

これではスイングの右回転の力が前脚から逃げて行くのでパワーをロスしてしまいます。ここが最も修正したいポイントです。

ブライス・ハーパーも良いですね。

振り切るまで前脚軸をキープすることが出来ています。この点に注目して、フィルダー、チュ・シンス、ハーパーの動画を見てみましょう。

ブライス・ハーパー(4hits)
プリンス・フィルダー(4hits)
チュ・シンス(4hits)

全てヒットの動画です。ホームランに比べると、打った後に走り出す必要があるからか、前足を引きますが、振り切るまでは引いていない事に注目してください。左のパンチャーの場合、これが出来るようになる事は必須だと思います。

サム・フルドも非常に良い例です。打った後、走り出す時は前脚を後ろに引きますが、バットを振り切るまでは前脚軸をキープしているので、スイングのパワーをロスしないのです。(バットスイングの右回転を前脚軸が受け止めて、力が一点に集中されているからスイングがバシッと鋭く、押し込みが効くのでライナーが伸びる。)

サム・フルド (動画)


ではなぜ、林さんの場合、試合の中でこのような動作にならないのかと言う事ですが。。

最大の原因はやはり前脚を内に締める動きが再び出現している事でしょう。

この動作のために、前脚着地の時点でタスキラインを引き伸す事が出来ていません。結果的に前脚着地に伴う地面反力(前脚から骨盤に伝達される地面反力)によって骨盤が回転する事により、タスキラインを引き伸しています。

この結果(パンチャーのメカニズムとしては)骨盤の回転が大きく先してしまい、ボトムハンドの引きが強くなっています。こういうフォームの場合、フィニッシュで前脚を後ろに引きやすくなります。

プリンス・フィルダーのフォームを見ると、タスキラインの伸張に骨盤の回転(前脚着地の地面反力による)をあまり使っていない事が解ります。

林さんが「骨盤の回転」を使ってタスキラインを引き伸しているのに対し、フィルダーは「前脚股関節の外旋」を使ってタスキラインを引き伸しています。つまり「股関節の割れ」ですね。この結果、その次に「絞り」を使えるので、前脚股関節が締まって前軸が崩されにくいのです。

一方、ハーパーの場合は前脚股関節の割れはイマイチですが,始動時に発揮される下半身の力が強く、重心移動が大きいので、踏み込んだ前脚にかなり体重が乗っています。その結果、振り切るまで前脚軸がキープ出来ているわけです。

つまり、これを林さんの場合に置き換えると「前脚を内に締めるクセが直り、前脚股関節の割れ〜絞りが上手く機能するようになる」「始動時に発揮される下半身の力がもう少し強くなる」と言う二つのポイントがクリアされて来ると、前脚軸をキープしたまま振り切れるようになるでしょう。

そして、それが出来るようになると「(試合での)スイングもメジャー流」になると言うわけです。

★打席での行動

その他、フォーム以外の事についてですが。。

下の動画は2試合目(3日目)の第二打席、三振した打席のもので、その直前の見逃しボールからの映像です。

まず、ハーフスイングの止め方は非常に上手いです。こういうシーンが他にもありました。そして、ストレッチの挟み方や構えの作り方、構えるタイミングなども非常に良く考えられており、見ている皆さんも勉強になるでしょう。見逃した後、筋肉の硬直を防ぐために素振りを挟む意図も良く解ります。そして一度構えを外して再び素振りをしているのも解ります。これだけ打席内での行動が考え尽くされていれば、それは5打数3安打で試合を決めるツーベースも打てるでしょう。

ただ、気になるのは、素振りの仕方です。一言で言うと(見ている限りでは)どうもコンセプトが不明瞭な素振りに思えるのです。

そして実際、二度素振りをした後に空振しています。もちろん、空振りする本当の原因を特定する事は出来ません。実際、どういうボールだったのかも見ていないわけですし。(ファインダーを覗いているので)その辺は林さん本人でないと解らないでしょう。(そもそも本当の理由など解る物ではないですが。)

しかし、空振りの仕方を見る限り、かなり前脚を開いて後ろに引いています。そして素振りの仕方は脚を挙げた所から、割と体を大きく回転させて振り抜いている感じです。つまりボトムハンドの引きが起こりやすい振り方です。そして、その次の空振では前脚を開いています。前述しましたがボトムハンドの引きが強いパンチャーは前脚を開きやすいのです。空振りした事自体の原因が全て素振りの方法に有るとは言いません。しかし、スイング自体には明らかに素振りの影響が出ています。(ひとつ言えるとすれば、この感じの前脚が開く打ち方だと目線がぶれやすいので、それが空振りの原因の一つかなと言うのは有ります。)

打席内での素振りの仕方については、もう少し考えた方が良いと思います。それは、普段の打撃練習の中で、どういう素振りの仕方をした後だと、良い感じで打てるのかをチェックしていくということです。

例えば、思い切り短く持ったコンパクトな構えからオートマチックステップでギュンと振り抜いてみるとかも一つの手です。この場合、バットを長く持った時にヘッドの重さは感じますが、それが上手く作用してくれると、スイングの軸は(コンパクトな構えからギュンと振り抜いた効果で)決まりつつも、バットを長く持った効果でスイング自体は大きく振り抜けると言う可能性も有ります。ただ、この場合気をつけたいのは、あまり腕の力で振ってしまうと、その影響は本番のスイングにも出てしまうということです。ですからこの場合、相当緩く振るか、いっそ全力で振ってしまうかのどちらかが良い気がしますね。

その他にも、バットを下に下げたり、くるんと回した後に、マグワイアくらいのタイミングですぐに振ってしまうとか。この場合は筋肉をほぐす効果が期待出来るでしょう。

その他、動画くらいの感じ(実際のフォームとかけ離れている)で振るくらいだったら、いっそもっと軽くブラーンと振る格好をするくらいにしておくとか。。

正直、このへんの事に関して(実打を伴って)試してから書いているわけでは有りませんので、そうした事は林さん自身で試してもらう他は無いのですが。(個人的な向き不向きも有るので)

少なくとも、何通りか考えてみて打撃練習の中で試しておいた方が良いと思います。その辺が決まって来ると、もっと良い結果が出るかなとも思ってしまいます。打席内での行動はかなり良いと言えますが、素振りの仕方に課題有りと言った感じです。そこをもっと突き詰めて行くと、もっと打てると思います。

いずれにしても打席内での素振りと言うのは難しいテーマです。微妙な打球感が損なわれるので(試合前に充分なフリー打撃が出来ていると言う前提では)究極的にはやりたく無いのですが、見逃しが続いたりして構えてばかりで振らないでいると体が固まって来るので、それをほぐす必要がある時は素振りが効果的なのです。また、アマチュアだとプロのように試合前にフリーが出来ない方が多いでしょうから、試合当日の打撃練習と言うかウォームアップではやはり素振りをせざるを得ないでしょう。ただ、野球経験が有ると解ると思いますが、素振り素振りの練習が続いた後、いきなり実打に移行しても、いきなりは調子が出ないものなのです。つまりボールにアジャストする微妙な感覚と言うのはボールを打たないと作れないし、また時に素振りでその感覚が鈍ってしまったりもするものなのです。かつて松井秀喜が「素振りほど難しい練習は無い」と言っていましたが、そういう意味も有るのではないかと思います。

例えば、ファール、ファールで粘って良い感じでタイミングが会って来ているのに、タイムで間を取って「ブンッ」と如何にも素振り的な素振りをした後に落ちる系の球を一本調子な棒振りで空振三振。こんなシーンは何度か見た気がします。その他にも、1点ビハインドの9回裏1死満塁の絶好のチャンス。クローザーが同様してノースリーになり、3球続けて見逃した後、次のストライクも見逃して、合計4球続けて見逃し。その後に素振りもしないでバッティングカウントから甘く入った5球目を打つも、手元が狂って打ち損ないのポップフライでツーアウト。相手クローザーが落ち着きを取り戻して次の打者でゲームセット。こんなシーンもありそうな気がしますね。

★左肩の柔軟性

最後にもう一点、フォーム上の問題についてです。結論から言うと、右投げ左打ちに典型的に見られる問題なのですが、左肘のえぐり込みが浅いと言う事です。つまり左肩が外旋して、肘が深くえぐり込んで来る動きが浅いのですが、もっと肘が深く入るようになるとバットがもう一段内側から出て、フォロースルーで腕も大きく伸びるようになるはずです。

素振りでも、中断2コマ目から3コマ目にかけて、もう一段左肘が深く入ってくれると、もっとバットが体の近くを通るようになるでしょう。

試合の中では、それがさらに顕著でした。

メジャーでも右投げ左打ちのパンチャータイプは、そういうスイングをする打者が多いですが、以下の3人は典型的です。トップハンドの外旋が浅いので、手首を返すのがタイミング的に早くなり、どうしてもトップハンドで被せるようなスイングになってしまうわけです。(トップハンドが潜り込まない)


それに比べると、同じ右投げ左打ちでもプリンス・フィルダーは全然違いますね。トップハンドを潜り込ませて低い球をすくい打つのが非常に上手いです。またきたろうさんは右投げ左打ちでもフィルダーと同じようにトップハンドのえぐり込みが深いですね。


ちなみに以前、マサヤ君と言う右投げ左打ちの選手に、林さんと全く同じ事をお話した事が有ります。(マサヤ君動画)

ですので、今後少しづつでも左肩の柔軟性を向上させて行くと言う事が大きな課題になるでしょう。究極目標は左でも投げられるようにすることですが、それが難しくても左投げのシャドーで左腕を綺麗に振れるようにしていく必要性が有ります。右投げ左打ちはすることが多くて大変なのです。

左肩のストレッチ、左投げシャドー、皿回しストレッチも良いです。ただ、いずれの場合も、ストレッチの後は体をバットスイングに馴染ませるために数回のスイングを必要とする場合が有ります。(静的ストレッチは特に)

以上です。