2013年5月4日土曜日

まーやんさん動画分析

今回は掲示板の方には納まりにくいので、特別にこちらの方に書きます。







まずは(ハムストリングスがそこそこ使えて)躍動感が有るカッコイイフォームになってるので、第一段階はクリアと言った感じでしょうか。ここらがが中身を詰めて行く段階になると言う事です。

ワインドアップモーションの方が問題が明確なので、先に書きます。脚を挙げた時の形に問題が有り、その結果、降ろして行くときの形にも問題が有ります。ここが改善されれば、さらにハムストリングスが使え、前に乗り込んで行く力が強くなります。

まずゲームの中でこれだけ脚が上がってるのは素晴らしいのですが、両腕で作った輪の中に膝を入れるような脚の挙げ型になっている事が問題です。

まず、メジャー型の脚の挙げ方として、骨盤を後傾させて前脚を挙げる事は理解していると思いますが、その反動で降ろす時には前傾します。

これは、前脚を降ろす時に、体幹部を立てている事によって可能になります。(図A)

図A
ただ、ここで体幹部そのものが前傾してしまうと、図Bのように脊柱全体が丸まってしまうため、骨盤は後傾してしまいます。

図B
つまり、図Aでの赤いパーツ、つまり骨盤が、図Bでは、体幹部全体となってしまうわけです。図Aでは体幹部全体は立っているので、骨盤だけが前傾することになります。しかし、図Bでは体幹部全体が前傾してくれるので、その中の骨盤が前傾する必要は無くなるわけです。そうすると、前傾する「体幹部ブロック」の中で、骨盤は後傾のままと言う状態になります。これが、今のフォームの中で起こっている事です。つまり前脚を挙げた時に後傾した骨盤が前傾位に戻っていないのです。


しかも、体幹が前傾した時、顔は立った状態のときと同じで帽子のツバが地面と平行になる角度になっていますから、脊柱の軸と首の軸がずれてアゴが上がっている状態になります。こうなると、胸椎が前彎し、腰椎が後彎しやすい(青のライン)ので、骨盤は後傾しやすくなります。(ただし、ここで首も斜めに傾けると、サイドハンドのような投げ方になってしまいます。)

このため、骨盤を後傾させて前脚を挙げた後は、体幹を立てた状態で前脚を降ろした方が良いのです。下の写真の二人は、それが比較的出来ている例です。(ただし、立て過ぎると、重心が背中側に傾いてしまい、投げた後、悪い意味で一塁側に流れるのでよく有りません。僅かに前傾が起こるくらいになるのが自然です。下の二人の中間くらいの前傾角度が理想的です。)

クレイグ・キンブレル

それでは、まーやんさんが、何故このように体幹を前傾させてしまっているかと言うと、それは脚の挙げ型に原因が有ります。前脚を挙げて来る時、その膝を両腕で作った輪の中に入れようとするので、両腕が膝を抱え込むような形になり、丁度、体育座りをしているような状態になっているのです。その結果、脚を挙げた所で、体幹が前傾気味になるので、そこから前脚を降ろして行く時にさらに前傾してしまうのです。

そして、体幹が全体として前傾してしまうので、肝心の骨盤が充分に前傾してくれません。さらに、重心がお腹側に来るので爪先荷重になり、ハムストリングスが使いにくくなります。つまり、この時点(前脚を挙げた時点)でハムストリングスが使いにくい二つの要因が出来てしまっているのです。

1)体全体が前傾してしまう事で肝心の骨盤が前傾しにくい。
 2)重心が爪先よりに来る事でハムストリングスの力が使いにくい。

こうした結果、ハムストリングスが緩んでしまうので、その力が使い切れず、体を充分に打者方向に運べません。さらに悪くなると、後ろ脚が体重に負けてグニャッと折れてしまい、着地も早くなり前脚もズボッと地面に突き刺すような着地になってしまいます。 これらがハムストリングスが使えていないフォームの典型的な特徴です。まーやんさんのフォームも、まだ少しそういう所が抜け切れていません。ここが改善されれば、ハムストリングスが効いてくるので、もっと後ろ脚で粘り強く、長く地面を押す事が出来て、前脚が降りても、低空飛行で打者方向に体を大きく運べ、前に体重が乗り込むフォームになります。そして、その下半身動作との連動で、もっとテークバックで投球腕が大きく、柔らかく動くようになります。もちろん、球速も挙ります。このあたりが球速に直結するポイントだからです。

まーやんさんのフォームは、1コマ目で骨盤が後傾気味でハムストリングスが効きにくい。そのため着地が早い。(2コマ目は既に着地している。)一方、チャップマンのフォームでは両脚のラインが赤線の形になるまで着地を我慢出来ている。(同じ両脚のラインはまーやんさんの場合、着地後の3コマ目に出来る。)チャップマンの方が、重心移動が大きく、そのぶん前脚の着地が遅い。これが球速に繋がっている。

ですから、まず前脚の挙げ方を変えて行く必要があります。もちろん、マイナーチェンジで済む事ですが。

現状では、膝が胸に付くくらい高く上がっているのは良いです。また、最初に後ろ脚でトンと踏んではハムストリングスを効かせる動きも非常によく出来ています。ただ、膝を両腕で抱え込むような前脚の挙げ型だと、どうしても体幹が前傾気味になるので、そこを修正した方が良いと言う事です。ただし、このメジャー型の脚の上げ方は、極めようとすると、そんなに短時間では出来ないものが有ります。ですから、高いレベルで完成の域に達するには後、2年くらいは必要になると思います。理論が有るのでもっと早いかもしれませんが。ただ、そこからも「動きの質」はまだまだ向上していくでしょう。ただ、基礎的な事は、そんなに時間がかかるわけでは無いので、まずは基礎的な事を完成させられれば充分です。

まず、第一段階として、両手を体の近くに置いたまま前脚を挙げるようにしてください。そうすると前傾姿勢になりませんし、踵に体重が乗りやすいのでハムストリングスの力も使いやすくなります。

そして、その上で、ピッチャーズハイキックと言うエクササイズで、脚の挙げ方のポイント(下記)を、もう一度思い出して下さい。

このエクササイズをしながら、以下のポイントを一つずつ意識していって下さい。(例えば、ポイント1を意識して3回など)

ポイント1 背骨を柔らかく使い、骨盤ごと回転させて、体幹部から前脚を挙げる。
ポイント2 後ろ脚でトンと踏むと、前脚がポンと挙る。
ポイント3 前脚をリラックスして振り上げると、膝は勝手に曲がる。
ポイント4 体幹を背中側に倒すと、脚が挙る。このメカニズムを頭を残して行なう。

続く。

そして最大のポイントとしては、下の動画のように、手を体の近くに置いた状態に保ち、前脚を挙げるということです。

まーやんさんの場合、スタートでは手が体に近い位置に有りますが、そこから肘が浮くのが早いです。コツとしては、肘が僅かに浮いた状態からスタートし、体幹との連動で(脚が挙って来た時に)肘がクッと浮くまで、スタートの位置に固定しておく事です。もちろん、リラックスした状態でです。このようにすると、脚を挙げた時に比較的体の近くに手を置く事が出来、体幹も前傾しにくくなります。一方、最初に肘を下げた状態で、脇を締めた所からスタートして、脚を挙げる時に大きく肘が浮くのはよく有りません。

コツとしては、最初に、軸足で地面をトンと踏む時に、ハムストリングスが使えていれば、僅かに肘が浮いた状態でリラックスしつつ、良い位置にロック(固定)される感じがつかめると思います。一方、この時、ハムストリングスが効いていないと、肘を浮かそうとすると、肩に力が入ります。なお、これはチャド・ビリングスリーのワインドアップモーションが非常に上手いです。少し肘の浮きが大きいですが、軸脚のハムストリングスが効き、リラックスした状態で肘を浮かせる事が出来ています。(2012/08/03 Billingsley wins third straight

↑ビリングスリーのフォーム。後ろ脚を引いた所で、軸脚に対して前傾軸が出来る。(ここで肘が少し浮く=後述)また、後ろ脚に対して骨盤が前傾するので、後ろ脚のハムストリングスが引き伸され、伸張反射で収縮するので、後ろ脚の膝が折れる(膝カックン)この膝の角度が出来る事により、下図の原理で股関節伸展の力が地面に伝わるため、後ろ脚でトンと踏む感じが出来やすい。(膝は曲げるのでもなく、伸ばすのでも無く、緩める。)
なお、軸脚の膝を緩めるのが上手いのが、ジョニー・クエトですね。膝は突っ張ると大腿四頭筋で伸ばしている事を意味するし、斎藤佑樹のように曲げると、重力に抵抗しようとして四頭筋が強く収縮します。ですから、曲げず、突っ張らず、「緩める」ことが重要なのです。そして緩めるためには、前脚を後方に引く事によって起きる、ハムストリングスの伸張反射を利用し、後ろ脚に「膝カックン」を起こしてやる事がコツなのです。

この感覚僅かにが浮いた状態でリラックスしつつ、良い位置にロック(固定)される感じ)が掴めるようになれば、良くなるでしょう。ただ最初は強調し過ぎて(上半身が力み)調子を崩す事も有るかもしれませんが、自然に馴染んで来ると上手く出来るようになるでしょう。基本的には手を体の近くに置いておきたいので、肘が浮くのも僅かな角度にしておく事が重要です。

※)ちなみに「ロックされる感じ」の正体は肩関節の内旋でしょう。(ラボで)肩甲骨のストレッチをする時、前腕を回内すると肩関節が安定するのと同じ理屈です。前脚を引く時、骨盤が前傾しますが、その時の脊柱のS字(胸椎の後彎)が強調されるので肩甲骨の外転と同時に肩関節の内旋が起きるのでしょう。

胸椎の後彎が形成され、肩甲骨が外転(青矢印)し、肩関節が内旋(赤矢印)することで、セットポジションが「ハマる」状態になっている(デレック・ロウ)


胸椎の後彎が明確で、肩甲骨が外転し、肩関節が内旋気味になっている黒人特有の骨格、仕草、姿勢。

さらにポイントとしては、ワインドアップモーションの構えで打者に正対している時は、直立なので肘を下に下げておきます。そこから前脚を引いた時、軸脚の膝が緩み股関節が僅かに屈曲し、体幹が少し前傾します。肘が浮くのはこのときです。つまり肘の向き自体は地面を指している状態に近いので、重力に逆らって肘を浮かす感覚では無いのです。ですからリラックス出来るわけです。

そして、この状態から前脚を挙げてやると写真(ジオ・ゴンザレス)のように、脚を挙げる時に体幹部との連動で両肘がクッと(自然に)挙り、腕を逃して前脚を高く挙げる事が出来ます。
この動きはもちろん、腕の力でやるのでは無く、体幹部との連動で行なう事が重要です。ちなみにメジャー式脚挙げをやる時に多くの人がつまずくのがここで、高く挙って来る前脚に腕がぶつかってしまうのです。それを避けようとして脚の上がりを低くしたり、また開き直ってそのままぶつけるようにしたり、まーやんさんのように両手を大きく前に出して、その両腕のワッカに膝を入れるような挙げかたをするといった例が見られます。しかし、上手く腕を逃してやる事が出来れば、無理なく前脚を高く挙げる事が出来ます。

写真(腕を上手く逃がしている例)


クイックモーション編

クイックモーションは、少し理論をマイナーチェンジしました。従来だと「抜き」と「捻り」を二大要素としていたのですが、そこから「捻り」を排して「抜き」だけにしようかと思います。その結果の新しい理論が下の動画の「すり足クイック」です。

ただ、全くの「抜き」だけだとタメが出来ないので、すり足クイックでは、構えから少しだけ捻り(後ろ脚股関節のラインに沿った捻り)を入れておきます。そして足幅は肩幅と同じくらいを目安にします。あまり狭いと「抜き」が難しくなるし、逆に広いと「捻り」をいれないとタメが作れなくなるからです。

念のために「抜き」の概念を図で示しておきます。
簡単に言うと、背後から誰かに一方の脚を払われた時に、倒れるのと同じです。それを自分でやるわけです。まずは動画のように、このすり足による「抜き」を体得してください。

因に、この「すり足による抜き」と言う動作は、スインガータイプの打撃フォームの中に多く見られました。特にメジャーに多いですが、ジョー・ディマジオ等が代表的です。張本勲もそうですね。

話をすり足クイックに戻すと、イメージ的には下の写真のあたりから始動(パンチャーとして力を発揮する)します。前脚を抜くや否や、直ぐに始動するイメージです。

やってみるとわかると思いますが、この方が大腿四頭筋で体重を受ける嫌な感じが無く、フォロースルーの体重移動もダイナミックになると思います。

なお、捻りで前脚の膝を内に入れようとする程、大腿四頭筋は使いにくくなります。これも実験してみてください。すり足が難しかったとしても、この事(前脚の膝を内に入れると大腿四頭筋が効き、ハムストリングスが使いにくくなる)を理解するだけでもクイックの球威は違って来ると思います。この事に気が付いた事が、今回の理論マイナーチェンジの意味でもあります。

ちなみにクイックでの脚挙げはバッティングに似ていますが、バッティングに例えると、下図左のような脚の上げ方だと四頭筋が効きやすく、右のような脚の挙げ方だと四頭筋が効きにくくなる(ハムが使いやすい)と言う事になります。
つまり、簡単に言うと「捻り」で後ろ脚に「乗る」ほど、大腿四頭筋が効きやすくなってしまうということです。そうでは無く「抜き」により、ある意味では「バランスを崩してしまう」と四頭筋は効きにくくなります。そして「抜き」を極限まで極めた形が「すり足」だと言う事です。

そしてまーやんさんのクイックを見ると、やや捻りが強すぎ、膝が内に入り過ぎて後ろ脚に乗り過ぎています。この辺がクイックでハムストリングスが効きにくいと感じる原因でしょう。

「捻り」については私がそう言ったので、私の責任でも有るのですが、今回の内容を一度試してみてください。クイックでも写真のようにステップ幅が充分に広くなると思います。

また掲示板には「クイックは四頭筋に乗りやすく、下半身の使い方がワインドアップと異なる云々」と書きましたが、今回の理論変更(すり足クイック)により、それを感じなくなりました。おそらくこれが出来るようになるとクイックでも球威が出ると思います。

以上です。